黒鉛の削り跡

アニメ見たりアニソン聴いたりした人が書いています。

「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- Paladin; Agaterm 」について語りた過ぎるので、全人類見てほしい。

Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- Paladin; Agateram

anime.fate-go.jp

スマートフォン向けゲーム、Fate/Grand Order メインストーリー第6章の劇場アニメ化作品。

前編は[Wandering; Agaterm]として2020年12月5日に公開されている。

「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」公式サイト

 

スマホゲームのアニメ化ということで、食傷気味な方々も多いだろう。

また、「FGO」のアニメということでも少し躊躇う方も少なからずいると思う。

 

TVアニメの[Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-]は賛否両論で原作を見ていない方にはかなり取っつきづらく、ピンと来ない場面も多かったのではないだろうか。

 

また、前編である[Wandering; Agaterm]はかなり説明的な内容で、ゲームの内容と少し乖離している部分もあったため、こちらもまた賛否あった作品であった。

 

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スマートフォン向けゲーム Fate/Grand Order としての第6章

ゲームとしての第6章、神聖円卓領域キャメロットは、FGOメインストーリーとして4年前に実装されたストーリー。

第5章でスマホ向けストーリーテラーとして覚醒した奈須きのこが本気を出したストーリーとして非常に印象深く記憶に残っている。

Fate/stay night で一世を風靡したセイバーが別の姿として主人公たちの前に立ちはだかるというのは滾るものがあった。

当時、あのガウェインに絶望した我々も強くなったものである。

この部分だけでも一本書きたいレベルではあるが、今回は割愛する。

 

 

Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-Wandering; Agaterm 

こちらがその劇場版、前編。

Agatermとは、本作のメインとなるキャラクター、ベティヴィエールの銀の腕に由来する。

ベティヴィエールが旅をする理由と、その銀の腕はこの第6章の物語の根幹である。

前編はかなり説明的な内容で、移動シーンと会話が比較的多く間延びしているように感じた人も多いだろう。

ゲームのストーリーとしても、第6章の前半部はガウェインの聖伐とアーラシュの戦い以外の盛り上がりが少なく、かなり映像化が難しかったのではないかと思う。

ゲームでは文字で説明される場面背景を、セリフで説明しなければならないのは重荷だろう。

また、ゲームで登場していたキャラクターが少しリストラされていることにもにょった人もいるようだ。

個人的な評価としては、ストーリーはゲームをなぞっているが、劇場版なのに少し作画が厳しいアニメ、60点程度の作品だった。(ステラは100点)

 

正直、後編を見に行くモチベーションがあるかというと

「まぁやってたら見に行くかと思うけど、そのためにわざわざ外に出るかというとそうでもないな」

くらいのもので、実際期待値はかなり低かった。

 

もちろん、前編と後編で制作会社が子会社[SIGNAL.MD]から親会社[Production.IG]に、監督があのバリキオスさんという物凄い座組になっているのではあるが「それでも大丈夫なんだろうか」という気持ちが払拭できなかった。

 

そして、その気持ちは全くもって杞憂だった。

 

Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-Paladin; Agaterm

そんな中公開された後編。

最高の出来であった。

 

3言で言うと

・アクション最高

・作画美麗

・マシュがかわいい 

です。

 

前編で杞憂していたアニメオリジナル展が非常にうまく利用されており

ゲーム本編では見られなかったストーリーが繰り広げられるのはテンションが上がる。

ゲーム未プレイでも前編を難なく見終えた人であれば、話の理解は簡便であろう。

 

全体として作画が非常によく、 戦闘シーンだけでなく一枚一枚の止めシーンの美しさが際立っている。

ufotableFateのような写実的な美しさではなく、手描きアニメの泥臭さを突き詰めたような印象に残る映像は勝るとも劣らない。

そこに描かれているのは完全な現実ではなく、描き手が選びぬいた非現実。

Fate/Apocryphaの戦闘シーンを更に濃く煮詰めたような激しい動きのある戦闘は、

言葉だけではなく動きや描写、画角、色、全てに意思が込められている。

すべてのカットで目を離せない動きは、あまりにも美しい。

 

バックストーリーをセリフや改装だけでなく、シーンの演出で語りながらガンガン展開していくサマは、見ている我々を飽きさせず、さらにその先を想像で補完させてくれる。

 

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ストーリーに対して、ゲームから省略された物事がないと「これがアレなら、辻褄が合わない!」という声がよくある。

それは想像力の欠如だ。

桜野くりむも言っている。「メディアの違いを理解せよ」と。

 

ゲーム、特にノベルゲームで語ることができるものとアニメで語ることができるものは、本質的に違うだろう。

文言をすべて忠実にアニメにするなぞ、不可能であり、無意味なのである。

ゲームで語られた設定がすべてであるのであれば、シーンごとの映像化のみでよい。

いわゆる世界線が違う話である、ということを理解して見れないのであれば、

マルチメディアで展開するコンテンツに手を出さないほうが良い。

 

今回で言えばあるサーヴァントが2人ほど不参加であるが、それが不足していることにこの映像に何の不都合があったのだろうか。

ここで描かれていない事象はここで描く必要のなかったものなのである。

この物語の先にある物語は、この後にストーリーがあることを知っている君たちだけのものであり、

ここで語られるべきではない。いや、語るべきではない。

そこで語られたこの目に見えた世界を、独立した1つの世界として理解し、新たに解釈することが必要だ。

描かれていないことは、受け手に解釈を委ねられた部分なのである。

委ねられたのであれば、それに答えるのが我々の精一杯の礼であり、

なぜアレを描かなかったのか、と安易に問うのは如何なものだろうか。

 

だからこそ、今回の劇場版は見事だった。

描くべきところ、描きたいところの描写に魂を込め

そうでない部分、ここで描くべきではない部分は省略し、こちらに判断を委ねてくれている。

描かれていないことを嘆くのではなく、描かれていないことを歓びたい。

 

ただ、この映画は万人に勧められない。

カジュアルに見るハードルが高すぎるのである。

1.  FGOを6章までプレイする

2. 前編を見る

 1. は新規には厳しい。なぜならFGOのメインストーリーは第5章から面白くなるからだ。

真面目に読むと一週間以上かかる分量なので気軽には勧められない。

2. は70分超のなので勧めやすい、というわけではなくコレを見るとちょっと後編大丈夫か、となるだけでなく単純にゲームをしている前提になっている部分もあるので、結局1.が必要になるのだ。

だが、だからこそ、この映画は面白い。

必要な情報はお前らが持っているだろう、という強い信頼を感じられる。

突然、「FGOの映画面白いらしいよ?後編やってるし、見よーぜ!」と言いながらカジュアルに後編だけ見に来る物好きは絶対にいない。

それこそシン・エヴァのように、行末を見届けるものだけが集まる作品に近いのだ。

だからこそ、この作品は美しい。

ゲームとは違う角度で切り取られるキャラクターの心情、動きを観てくれ、俺はこう思った、お前はどう思う、と問いかけられている。

そういった挑戦こそが、魅力的な輝きを放つ作品となる要因なのだろう。

 

90分という尺の中で、戦闘シーンが大部分を占めるこの作品で、

すべてのバトルの構成が全く違い、飽きないというのは驚きである。

一つ一つの闘いのテーマが作画にも表れており、この作品が評価されるべきと感じる最大のポイントである。

単調になりがちな剣閃のシーンを、多角的な視点で捉え、

空間と光源を贅沢に振り回したカット割は必見である。

 っていうか、ほぼキャラデザのまま動いているのすごすぎませんか?

 

 

直後の感想集

 

 

ちなみに大体のことはすべてパンフレットで監督が語り尽くしていらっしゃるので

是非パンフレットを読んでください。

ちなみにこの文章の大半はパンフレットを読む前に書いています。

 

パンフレットに書いてなかったところは全部竹箒日記に書いてあるので

こっちも見ておいてください。

竹箒日記

 

 

ちなみに型月オタクというはわけではないので、見ているものが違う可能性があります。

 

 

以下ネタバレ有りの乱文。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三蔵法師とモードレッド

三蔵法師と俵屋藤太

あの三蔵法師の活躍は、アニメ化によってリストラされてしまったトータも浮かばれるであろう。

実際俵屋藤太が出ているとその説明と諸々でただでさえで短い時間が省略されてしまう。

 

そんな中、出演続行した三蔵ちゃんだが、モードレッドとタイマンは激アツ展開だった。

モードレッド自身のギフトは「暴走」、それに恥じない暴れっぷりを披露しながら、

三蔵法師の五行山釈迦如来掌と向き合うことになる。

このシーン、バトルこそ圧巻だがモードレッドと対峙したのが三蔵法師というのが良い。

戦いの中で玄奘三蔵は、ギフトで暴れるモードレッドに自身の記憶の中にある斉天大聖を見出していたのだろう。

だからこそあのラストシーン、”ファイナル如来掌"ではなく桃の花に包まれ母のような自愛の表情でモードレッドを抱いたのだ。 

 

・ラムセス2世とニトクリス

葛藤や描写が少なく、解釈が非常に捗る部分。

特に前半の立香とのなんとも言えない問答だが、ここで立香が曖昧なことを返答することで、第6章後編では数少ない本人の未熟さを描くシーンになっている。

だが、その未熟さこそがオジマンディアス王が自身を見直すキッカケになっているのであろう。

ここで問われる、自身の世界を救うとはなにか、という問はFGOを通じて語られる本筋であり、ここで藤丸立香はまだその答えに気づけていない。

その先はFGO本編をプレイしてみてほしい。

トライヘルメスが黄金神殿に搭載されているのも熱い。

アトラス院の神秘すら操るラムセス2世くんナニモンだよ。

ゲームとは違うラムセウム・テンティリスの姿は手に汗握る最高の展開だった。

あの砲撃、あの最終崩落、全てが熱い。

宇宙大戦系のアニメでも見ているのか?という気持ちになったり、

あの飛行形態、カービィのエアライドで見たなぁと思ったのは秘密。

 

ニトクリスはクソかわいい。超かわいいすき。

身を挺して自身の宝具を発動せんとする彼女を、同じファラオとして諌めるラムセス2世の姿は何よりもかっこよかったですよね…

自分を理想のファラオとして崇めるニトクリスを、彼女もまた別の時代のファラオであると認めた瞬間こそ、この2人の関係性を物語る美しいシーンだった。

・トリスタンとハサン

トリスタンとハサン(たち)との戦闘は、前編から続く因縁の対決。

静謐ちゃんが可愛く可憐に毒を撒き、呪腕先生がスキを刺していく攻撃に

圧倒的な技量と見えない衝撃波による閃撃で対応するトリスタンの闘いは

周囲の建物、特にガラスを粉砕しながら三次元で展開する見応えのあるシーンだ。

静謐ちゃんの驕りも、呪腕の決死の一撃も、トリスタンの最後の一声も

全てがガラスに映る透明な映像でありながら輝いて見えた。

 

・ガウェインとベティヴィエール

自身に義がないことを認識しながらも、その指名を全うするために戦いを続けるガウェイン、

自身の指名を果たすために、罪をその身で清算するために戦うベティヴィエール、

いわゆる信念と信念のぶつかり系バトル。

ベティヴィエールの軽快な剣戟、ガウェインのゴリラムーブ、崩壊する王城をバックに繰り広げられる地面に脚をつけた戦闘は2億回見ても良い。

ここが真の殴り合い、己が身と魂の一歩も引けない戦いは2兆回見ても良い。

 

・ アグラヴェインとランスロット

[細い血で塗られた道を1人、馬で駆け抜けるランスロット]と

[大量の強化粛清騎士を従え自身を化けさせてまで攻め立てるアグラヴェイン]

この闘いが最も心に響いた。

このシーンの美しさは後の世に語り具がれるべきである。

こちらも生き様のぶつかり合いであるだが、その演出にほぼセリフを載せず、音楽のみで二人の闘いの行末を描いていく様子は、私がFGOアニメで見てみたいと思っていたものだった。

崩壊する街と城、落ちていく世界での2人の闘いは、ケレン味のある動きを魅せながら、一枚一枚の美しさが映える作画は何度も見たくなる。

 世界を崩しながら、全身を崩しながら展開する意識と意識を交える剣閃は今作でもトップクラスのベストバウトだろう。

FGOにアックンをさっさと実装しろ。

アグラヴェインはこの円卓の騎士の主人公だったのかもしれない。

主人公だったからこそ、 ギフトを得たランスロット卿に打ち勝つことができたのである。

 

・マシュ

非常に可愛い。めちゃくちゃかわいい。

マシュがここまでかわいいFGOアニメは初めてだ。

ランスロットとの闘いで、巨大盾という質量を活かしたバトルを

緩急をここまでかと言うほどハッキリつけた動きで魅せてくれるのは、満足感しかない。

ロードキャメロットがもうちょっと熱い感じで出ていれば…と思ったが、

これはベティヴィエールの物語なのでここは一旦飲み込んでおこう。

「お父さん」はよい。もっと言ってくれ。

 

獅子王、聖剣返還

獅子王の圧倒的な攻撃はやはり観物。

このシーンをどう描くかが、この映画の出来を決めると思っていたが、本当に素晴らしい最後だった。

何度見てもベティヴィエールが正体がわかるシーンは鳥肌が立つ。

ゲームではユーザーを騙してくる演出となっており、非常に印象深い部分だ。

っていうか、お前マジでどうやってガウェインと殴り合ったんだ…。

獅子王に聖剣を返還するシーンについて、言葉はいらないであろう。

あのシーンにアレ以上の表現方法はない。

完璧だった。

そしてアックン、お前は最高だよ。

 

 

 

イマイチおぼろげな点もあるので、二回目を見に行こうと思う。

 

 

パンフレットを読むと、各戦闘シーンはすべて別の担当で作業されたとのこと。

だからこそ、全てのシーンに色がついていたのか…。

しかもそこで出てる名前、あの人も参加してるの!?みたいな現代バトルの申し子みたいな方ばかりでびっくりしちゃった…。

サーヴァントバトルは怪獣大戦争とのことだが、Apocryphaでのカルナくんも確かに完全にKAIJUだったので驚きはない。

だが、これもまた新しい怪獣映画だったのか、というのが非常に良い。

 

 

どうでもいいことですが森井しづき先生のキャラクターが好きです。

金魚鉢ホロスコープとか好きです。 

 

他何か思い出したり、二回目みて気付きがあったら追記していきます。