リズと青い鳥の"場所"ついてちょっとだけ語りたすぎませんか?
リズと青い鳥がついに公開になりましたね。
試写会1回+公開後1回という感じなんですが、書いときたいことがあったので短くまとめて書いておきます。
以下、ネタバレ有り
試写会
リズと青い鳥の試写会に来ました。テンションが高いです。
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月5日
リズと青い鳥、試写会参加しました。最高の映画でした。山田監督と牛尾さんのタッグによる最強の世界観を垣間見ることができました。
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月5日
リズと青い鳥を見に行くべき人は聲の形のBDについてる映像音声特典のinner silenceが好きな人で、多分そういう人が見ると死ぬ(死んだ)
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月5日
リズと青い鳥見に行くべき人を追加でいうとユーフォを劇場版とかと合わせて20回くらい見て、空間のエモみを味わっている人は死ぬ
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月5日
2回目
リズと青い鳥、2回目見たけど無限に良くて感情が破壊されてエモい以外の思考ができなくなった
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
リズと青い鳥、静寂を物語に合わせに来る山田さんの得意技法めっちゃ来てるなって思った
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
リズと青い鳥には藤田春香さんが参加してないんですよ。
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
ヴァイオレット・エヴァーガーデンに参加してるから当然なんですけど。
加えて、石原さんも絵本なので、本編にはあんまり関わってなさそうなんですよ。
何が言いたいかというと、"花"が出てこないんですよ。
そういうわかりやすい表現すら削って作られたからこそあの静寂があって、画面上の小物が訴えかけてくる意味よりもその静寂自体が語りかけてくるっていう作りが本当に特殊すぎると思う。
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
まぁでも理科室のふぐの横に1カットだけ登場する緑の水槽はエモすぎて死ぬ
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
いろいろな部分でいろいろなことが語られるだろうが、私が一番キた部分についてピックアップして書こう。
今までの物語によって付与された意味合いのあるモノや場所によって物語を形作ることによって、 #リズと青い鳥 がユーフォシリーズであることを明確に示してくる感じが本当に堪らなかった。そのために作品外部からのメッセージ性のある小物を減らしていったようになっているのはもはや怖い。
— がくふぁ (@gurafa) 2018年4月22日
シリーズを通して場所に物語を埋め込んで、それを拾い集めていく構成は普遍的であるが、徹底してそれを貫き通すのがこの作品の恐ろしいところだと感じる。
今回は絞って、3つの場所+1について少しだけ書きたい。
LIKEじゃなくてLOVEベンチ
あの夕暮れに校庭の上にあるベンチでのぞみが一人座っているあのシーン。
1期10話で麗奈が滝先生が好きであることを久美子に告白した場所である。
「LIKEじゃないよ、LOVEの方ね」
場所が持つメッセージはこれだったのだろう。
パンフレットで山田尚子監督は吉田玲子さんとの対談で、みぞれにとって希美との会話は全てが「最終回」であり、彼女にとってこの関係はまだ「恋」であるといった、「恋」と「愛」の違いについて述べている。
あのシーンでここに座っているのは希美だ。
高校生の間に二人が同時にここに座ることはないのだろう。
希美はまだ「LIKE」すら知らない、だからこそ、のぞみはそこに座れない。
そのすぐ後の演奏から、理科室での「恋」の告白によってやっとスタートラインにたったのだろう。
だからこそ、その先を行く久美子と麗奈があの演奏を完璧にこなせるのは当然のことなのだ。
突き当りの楽器置き場
それに関連して、久美子と麗奈が演奏するあのシーン。みぞれ以外の3人が例の場所で2人の演奏を聴くあのシーン。
例の場所、正直あの場所であんなことをされるとこちら側としては高まりがすぎる。
1期10話で久美子が香織先輩のソロ練習を聞き、田中あすかパイセンにどっちを応援したいか詰問する場所だ。
ここで聴く演奏というのは、一方的なメッセージを聞き手が受け取る場所なのだ。
ここで受け取ったのはもちろん希美だ。
別の場所(音楽室前?)にいたみぞれが受け取ったものとは全く分量の違うものだったのだろう。
あすかパイセンはここで香織先輩についてこう話す。
「ただ、納得していないんだろうね、自分に」
この場所が示すのは自身の他者に対する想いのあり方の違いを、受け入れることができているか、ということなのではないか。
希美もみぞれの演奏は自身とレベルが違うことはわかっている。
わかっているからこそ、みぞれの実力を誰よりも知っている自分だからこそ、自身がリズであり、自身に恋する青い鳥を解き放たなければならないことを受け入れなければならなかったのだ。
その葛藤を刺激する2人の演奏は、さながらあすかパイセンの御言葉のようであった。
廊下
廊下は辛い。
特に音楽室の前の廊下は、本編でも様々なストーリーが展開された場所であり、カットにより様々な表情を見せる場所である。
しかし、この場所でポジティブなシーンが繰り出されることはほとんどなかった記憶がある(未確認)。
秀一は県祭を断られ、葵ちゃんは退部し、麗奈は膝を叩いて騒ぐ。
今回も音楽室の前の廊下は辛い。
事もあろうに音楽室の前の廊下で希美はみぞれをフるのだ。
2期4話、みぞれが希美から逃げ出していたシーンを思い出そう。
あのシーンではみぞれが廊下で練習をしており、そこにきた希美からみぞれは逃げ出した。
一年後は逃げ出したのは逆だった。
しかし、みぞれにとってその逆が示す意味はとても重く、みぞれにとっての「最終回」が直前まで近づいているような感覚になるのだろう。
廊下とは、思いが一方的に通づる場所なのだろう。独りよがりな想いでは「愛」は育まれない。
そこに少しの不和があったなら尚更である。
希美は純粋すぎるがゆえに、通るべき道を通ってしまうのだ。
だが、そこが愛おしくなってしまうんだよなぁ。すき。
高校
最後に、校舎。
今回の映画、校舎内の出来事だけで全てが完結している。
登校シーンで始まり、下校シーンで終わる。
その間に学外に登場人物が現れることはない(プールの写真は除く)。
今までのシリーズでひたすらに描かれていた高校のみを利用することでその場所それぞれに意味をもたせ、他の作品では成し得ない強烈なメッセージを言葉を使わずに場面と場所だけで伝えてくる。
先にも述べたが、この下地こそがユーフォニアムシリーズの上にこの作品があるべき理由なのだ。
1発もの作品では、場所にエネルギーを持たせることは非常に難しいだろう。
そうなれば花や書籍、モノローグを用いて物語の外部から情報を入れていく形になるだろう。
だからこそ、響け!ユーフォニアムに描かれた「場所」を利用したこの作品は圧倒的なのだ。
以下余談
っていうかリズ見終わると、2期4話のみぞれに話しかける先生の部分とかでも余裕で泣けるんですよね。
聲の形のinner silence ver.ってあったじゃないですか。
あれって牛尾さんがプロットの時に山田さんに渡した原初の聲の形のBGMらしいんですよね*1
つまり、初めに作りたかった聲の形のレベルを更に上げたものがこれなんじゃないかと思うんですよ。
音楽を通して別の音楽を表現する。
音楽を通じて映像を表現する。
歌のないミュージカルといっても過言ではないような、圧倒的な劇伴はこの作品の印象をn倍にも加速させている、というよりも、おそらくこの劇伴と同時にこの作品は組み立てられたのだろう。
調和しているというよりは、このアニメ自体が音楽でできているとしか言えない。
っていうかもともと泣けたシーンが全部エモさ100倍アンパンマンなんですよね。
怖すぎる。
山田尚子。怖すぎる。
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