黒鉛の削り跡

アニメ見たりアニソン聴いたりした人が書いています。

覆面系ノイズについて語りたすぎませんか?

アニメについて語りたすぎたのでブログを開設した。

 

まず初めに何のアニメについて自身の所感を語るのか、これはかなり重要なことであろう。

まどか☆マギカ」か?「チャー研」か?それとも「ザンボット3」か?

 

では記念すべき初回に話したいアニメはこれだ。

 

 

覆面系ノイズ

ALICE ~SONGS OF THE ANONYMOUS NOISE~<初回仕様盤> (2枚組)

fukumenkei-anime.jp

 

 

 

覆面系ノイズとは」

アニメオタク界隈で語られるアニメのジャンルは様々なものがある。

この作品はその中でも少女漫画を原作とした「少女漫画系アニメ」である。

 

少女漫画が原作のアニメを皆さんは見たことがあるだろうか?

有名なところでは「ちはやふる」、「はいからさんが通る」、「君に届け」などが有名であろう。

一部では少女漫画原作アニメは当たりが多いと言われるほど、昨今でも耳にするような名作が多いと私は思う。

アニメ化のペースとしては1,2クールに一本ほどの割合だが、その存在感は所謂アニメオタク界隈ではあまりないのが現状だ。

だからこそ、そこに至極の一作が埋まっているのである。

 

今回語りたいアニメ「覆面系ノイズ」もその中の一作だ。

高校生の主人公とその初恋相手モモ、そして主人公に片思いをする幼馴染ユズの三人の三角関係を描く、というと「如何にも」少女漫画という王道ストーリーのように感じるだろう。

キャラデザも顔の面積に大してやたらと目が大きかったり、男性がとりあえず全員イケメンだったりと我々の想定する「少女漫画」を如実に再現してくれている。

それだけではそこまで語りたいと思うようなアニメではないのではないかと感じる方もいるだろう。

 

しかし、このアニメにはもう一つの属性がある。

それは「バンドアニメ」だ。

 

 

バンドアニメとしての覆面系ノイズ

バンドアニメと聞いて、この記事の読者ならいくつか頭に浮かぶ作品があるだろう。

けいおん!」、「Angle Beats!」、「SHOW BY ROCK!!」などなど様々なアニメがある。

バンドを通じて、音楽をすることによって育まれる絆や、自身の生長が描かれる。(そうでないこともある)

この「覆面系ノイズ」もその一つである。

ここで、バンドアニメにおける重要アイテム、バンドが如何に結成されていくかという部分に注目してみよう。

 

1. 学校の部活動

王道パターンである。

そして学校の部活は大体廃部の危機に追い込まれるのである。

けいおん!」や「Angel Beats!」、「WHITE ALBUM 2」はこれに該当する。

やはり高校の軽音部というのは、高校生を主役に置くことが多いアニメの世界に置いて圧倒的な親和性を誇るのであろう。

 

2. 勢いで結成

涼宮ハルヒの憂鬱」や「BanG Dream!」、「風夏」が該当する。

何かに所属 (SOS団はバンドをするための集団ではない) しているわけではない人達が勢いで集まって勢いでバンドをするタイプの作品だ。

僕は未だにバンドリ!が描きたかったものがなんだったのかわかっていない。が曲は素晴らしい。

知っている方は是非お知らせください。

 

3. 既にデビューしている

既にデビューしている人達、もしくはそこに主人公が参加する流れのアニメだ。

そにアニ!」や「SHOW BY ROCK!!」、「NANA」がここに該当する。

1,2に該当するアニメよりも解散しそうになることが多い印象がある。

 

4. その他

小学生がいきなりバンドしてたり、なんか戦闘機に乗って宇宙でバトルしてたりするバンドアニメもある。

 

この区分けで「覆面系ノイズ」は  13 に該当する。

主人公のニノ( CV. 早見沙織 ※重要 )はとあるキッカケから覆面系バンドである「in No hurrry to shout;」 にボーカルとして参加することになる (その時の持ち歌は謎の歌詞がない曲と伝説となったキラキラ星のみであった)。

 

そう考えるとやはりありがちなアニメなんじゃないかと思う方、もうちょっと待って欲しい。

このアニメが語るにふさわしいと感じた理由の1番がこの「in No hurry to shout;」にある。

なぜならこのバンド、オルタナティブロックを演奏しているからである。

  


 

♭1 ぼくたちは、ほんとのこころを、かくしてる 

古今東西、様々なバンドアニメがあるが、その中で演奏される曲の大半はロックというよりかバンドサウンドを用いたポップスであることが多い。

時折メンバーにいないはずのシンセやストリングスが流れていたりするのもご愛嬌である。

この「覆面系ノイズ」の放送開始当時、私自身『いつものちょっと明るめポップスが流れるんだろうなぁ』とぼんやりと見ていた。

 

しかし、この「覆面系ノイズ」は違った。オルタナティブロック、しかも割と渋めのやつだ。

それもそのはず、このアニメの音楽担当はSadesper RecordのNARASAKIさんである。

NARASAKIさんといえば「UN-GO」や「楽園追放」の劇伴音楽を担当しておられ、アニメ界隈でもお世話になっている方も多いだろう。

そのNARASKIさんの原点とも言えるバンドサウンド、オルタナティブロックの作曲を担当するということはもうどういうことかおわかりだろう。

とりあえず聴いてみてくれ!!


in NO hurry to shout;_アレグロ 音源試聴(TVアニメ「覆面系ノイズ」EDテーマ収録)


in NO hurry to shout;_カナリヤ [ANIME SIDE] 音源試聴(TVアニメ「覆面系ノイズ」挿入歌収録)


in NO hurry to shout;_ノイズ音源試聴(TVアニメ「覆面系ノイズ」挿入歌収録)

 


 

これらの楽曲はこのアニメのために書き下ろされたものであり歌詞はもちろん原作者の福山リョウコ先生だ。

高校生、思春期特有の複雑で繊細な気持ちを本当に力強く歌い上げている。

その勢いはこの曲が伝えたい気持ちをダイレクトに脳天にぶつけられるような、自身の魂が揺さぶられるような、不思議な感覚に陥る。

紹介した三曲の歌唱は主人公のニノを演じる早見沙織氏である。

その歌声を聴けば群雄割拠の声優業界でも実力者として認められる声優であることを再認識させられる。

その早見沙織が今回の主人公を演じているということがこのアニメの面白さを異常に加速させている要因なのである。

劇中において、早見沙織演じる主人公ニノは「in No hurry to shout;」のボーカルとしてこのバンドに参加する。

「in No hurry to shout;」はデビューを目前に控えたインディーズバンドでありそれまでのボーカルである深桜の代わりにニノがそのボーカルを務めるという流れで主人公がバンドに参入する。

深桜の声優を務める高垣彩陽もその歌唱力が評価されている声優の一人であろう。

OPである「ハイスクール[ANIME SIDE] 」は二話とそれ以降で歌手が深桜とニノとで入れ替わる。


in NO hurry to shout;_ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- 音源試聴(TVアニメ「覆面系ノイズ」OPテーマ収録)


in NO hurry to shout;_ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative- 音源試聴(TVアニメ「覆面系ノイズ」OPテーマ収録)

 

どちらのハイスクールも素晴らしい。

深桜のハイスクールは、丁寧でありながらも少しひねくれたような甘ったるい歌い方でその性格を楽曲からもうかがい知ることができる。

ニノのハイスクールは対照的で、勢い100%のような歌唱である。

これは本編のニノの性格がこの通りであるからこそなのであるが、それを歌唱にも反映する早見沙織のポテンシャルの高さに驚かされる。

古今東西、様々なキャラクターソングが世に出ているがやはり大半はキャラクターの声で声優が歌う楽曲、程度にとどまっているものが多い。

そんな中でこれらの楽曲は、そのキャラクター自身の魂が、ストーリーから感じられるキャラの思いをさらに補強するように描かれ、歌唱においてもそれを十二分に表現している。

これがこのアニメが特異な点である。

 

アニメソングはアニメに寄り添ったものであるべきだ。

それは声優が歌えばいいというものではない。

その歌詞、そのメロディ、そのサウンドがアニメの世界に我々を誘ってくれる楽曲こそが優秀なアニメソングだ。

 

その点において、この覆面系ノイズを構成する楽曲達は完璧に近いアニメソングだ。

上に挙げたアニメでもそれを表現できている作品は非常に少ない。

それだけでもこのアニメは貴重なのだ。

さらに少女漫画原作アニメという部分もポイントである。

少女漫画では思春期の男女の関係が描かれることが多い(そらそうだ)。

そこでは作者が登場人物が持つ思春期の感情を各々の描き方で色付ける。

このアニメに登場するメインキャラ三人は感情がいろんな方向に爆発している。

その爆発の仕方によって様々なスレ違いを産むところがこの作品の面白さなのである。

 


 

少し話を外そう。

貴方はきらきら星を知っているだろうか。


きらきら星 童謡 子供向けの歌 Twinkle Twinkle Little Star

 

知らない人は多分いないだろう。

さてこのアニメ以外で最近この曲が流れたアニメがある。

bang-dream.com

 

アニメ、バンドリできらきら星は主人公がステージの幕間をつなぐために永遠に歌い続けるという拷問のような展開を披露したことで有名だ( BDで修正される程 )。

バンドリが終わり、次のクールで放送された覆面系ノイズでこの曲が流れた瞬間の実況民の阿鼻叫喚は記憶に新しい。

しかし、このアニメは違った。

このアニメはきらきら星を1話だけの使用に留めなかった。

主人公のニノは感情が高ぶると唐突に叫び出すことがある。

そこで唐突に歌う曲の一つにこの曲がある(というかこの曲以外は大体なんかよくわからない)。

 

バンドリで使われたきらきら星、覆面系ノイズで使われたきらきら星。

これらの共通点、そして違いはなんだろうか。

 

 きらきら星 - Wikipedia

 

きらきら星の原題は「Ah! Vous dirais-je, Maman」であり、「あぁ、話したいのママ」である。その歌詞は娘が母親に自身の悩みを打ち明けるようなものになっている。

バンドリで歌われた際、この曲はご存知の日本語歌詞であった。

この楽曲が流れたシーンは作中バンドのPoppin'Partyが目指す場所を示すとても重要な場面であった。

これはこのきらきら星という楽曲が子供時代を象徴する曲であるということ、そしてそれは同時にこのPoppin'Partyが生まれ育つ場所、ゆりかごであることを示している。

その意味でこの曲があの場面で流れたことにはそれなりの意味があるわけだ。

このアニメできらきら星によって表現されているものは「初まり」なのである。

(いやまぁイキナリ登壇して歌い始めるのは流石にわけがわからないが)

 

では、覆面系ノイズではどうか。

覆面系ノイズでは様々な場面でこの楽曲をニノが口ずさむ。

何故か。

それは先の載せたフランス語歌詞を見ればわかる。

これは幼い子どもが「恋」というのは何なのか、ということを母に問うている曲なのである。

このアニメの三角関係のうち、二人は自分の気持ちを上手く表現できない病にかかっている。

それを明確に表すのがこの曲だ。

恋とは何か、自身が人を恋しているというのはどういうことなのか、それをニノやモモはまだ知らない、自身の今の気持ちが恋なのか、それを自覚するに至っていない。

その気持ちを表現しているのがこの楽曲なのだ。

覆面系ノイズの中で使われるきらきら星は「恋の歌」として扱われている。

 

クール続きの二つのアニメで「きらきら星」という曲の解釈を 二通り読み取れるというのはとてもおもしろく、これからのアニメにも現れるだろう未だ見ぬ「きらきら星」にも期待が持てる。

こういった楽曲の使い方が覆面系ノイズの世界を一層際立たせてくれている。

それはこのアニメの数々のオリジナル曲にも同じことが言えるのだ。 

 

覆面系ノイズにおける音楽

 

覆面系ノイズは感情の描き方として「in No hurry to shout;」をチョイスした (原作は未読なので早く購入したい)。

それが映像化されることによって「声」と「音楽」を手に入れた。

動画になることはこの作品にとってさほど重要ではないだろう。

 

とりあえずこれを読んでほしい。

っていうかこれだけ読んだらもう後も前も読まなくてもいい。

www.lisres.jp

 

主人公、ニノは感情をあまり外に出さない女の子だ、歌っている時を除いて。

幼馴染のユズが作った曲を歌っている時が自身の呼吸できる時、と述べるほどにニノにとって歌うことは大切なことなのである。

そして、初恋の相手であるモモと幼馴染のユズとの別れを経験してもなおニノはその曲を二人に届けるために歌い続ける。

 

だからこそ、この作品にとって「音楽」は必須なのである。

しかし、これは少女漫画原作アニメ。

アニメファンからしてもそこまで予算がかかって作られているとは考えない。

OP、ED、挿入歌を含めて10曲以上が書き下ろされていることが衝撃的なのである

それほどまでに制作陣はこの作品における「音楽」の重要性を訴えかけている。

 

作中において、ニノは歌が (技術的には) 下手であるという設定だ

特に初期の頃は音痴も甚だしいというような描かれ方をしている。

それに合わせて早見沙織が演技をしているのだが、それがまたプロの技を感じられるポイントである。

一聴すると粗暴に歌っている、叫んでいるだけのように聴こえるが、しばらく聞いているとそうではなくニノの情動が歌声に乗って魂に響いてくる。

このディレクションがこの作品に命を与える1番大きなファクターであると考える。

ここで流れる楽曲がいわゆるアニソン系A-POPポップロックのような楽曲であったのなら、琴線に触れることも無かったのだろう。

原作に忠実なオルタナティブロックでニノの心情の変化を如実に表すように我々を攻め立ててくる。

叫ぶようなその歌声こそが、キャラクターの本音でありこのお話の肝なのだ。

 

ニノは突拍子もない行動をよく行う。

それは突然歌い出すことであり、それは突然わけのわからないことを話しはじめたりすることでもある。

そこに込められているのは、それまで自身が口にできなかった様々なものに対する想いやモモとユズという二人の男子に自覚させられる己自身の言葉だろう。

その言いようもない気持ちを表すのに最適なのが、このニノにとっては、歌うことだったのだ。

魂を込めた歌はそれだけで人の感情を揺さぶる。

それをアニメで再現することはとても困難なことである。

しかし、この制作陣はそれをやってのけた。

 

楽曲を売るためのアニメでもなく、アニメを売るための楽曲でもない。

アニメと楽曲、この二つが一体となって「覆面系ノイズ」というアニメ作品は完成する。

 


まとめ

 

制作陣の魂が聞こえてくるアニメは名作である。 

確かに覆面系ノイズは原作未完で最終回も綺麗に締まった終わり方ではなかった。

しかしこのアニメが創り上げた覆面系ノイズの世界は、学園アニメ界において、少女漫画原作アニメ界において、バンドアニメ界において、少なくとも私の中では一つのマイルストーンのような存在になった。

 

もちろん、ストーリーはなかなかに突飛であり、主人公にもなかなかアクがある作品であるため、番人に受け入れられるような作品ではないかもしれない。

それでも、なぜそのような描き方がなされているのか、なぜ主人公は突然きらきら星を歌うのか、といったその想いを演出や楽曲を通じて知ろうとすることによって見えてくるものが沢山ある味わい深い作品である。

 

作品に込められた想いを全て拾ってアニメを見るなどという行為は、正直に言ってめんどくさいことだとは思う。

しかし、それを知りたいと思えるような作品に出会えることこそが幸せなのであり、この大量生産されるアニメから自身が思う最強の一を見つけることも一つの楽しみ方なのだ。

 

ニノが歌う曲はニノの世界そのものであり、それは覆面系ノイズという世界そのものである。

in No hurry to shout; が奏でる楽曲は暖かな無情であり、穏やかな激情である。

高校生が知る世界というものは自身が想うよりも狭く、そして自身が知るよりも拡い。

 

私たちがその世界を旅する手立てになってくれる至極の挿入歌が用意されているこのアニメ「覆面系ノイズ」を、是非見てくれ。

 

覆面系ノイズ Vol.1(初回仕様版)Blu-ray